歯周病
歯周病の症状と治療
[1]歯周病の症状
歯周病は自覚症状がないまま進行することが多いため、やっかいな病気ですが、日頃から注意していれば、さまざまな症状から歯周病の有無や進行具合をある程度推察することができます。注意すべき症状は次のようなものです。日頃からの注意が大切です。
歯肉がはれる
健康な歯肉は淡いピンク色をしていますが、歯周病の場合は赤く腫れることが多く、出血もしやすくなります。見た目では特に歯と歯の間の状態がポイントです。
歯ぐきから膿が出る
「歯槽膿漏」と言われるように「歯ぐきから膿が漏れ出る」状態です。この状態になると歯周病はかなり進んでいると考えて間違いありません。この膿は歯周ポケットの中で細菌と戦った白血球の亡骸です。膿が出ていると歯周病独特の異臭があり、口臭の原因にもなります。
歯が動く
歯周組織が破壊されると歯がゆるんで動き始めます。はじめは横にわずかに動く程度ですが、病状が悪化すると上下にも動くようになります。噛むときに物がはさまりやすくなることもあります。
噛んだときの痛み
歯を噛み合わせたときに痛むことがあります。
歯ぐきが下がる
歯周組織がなくなるため歯が長く伸びたように見えます。それでも他の症状がみられなければ、そうひどい状態ではないでしょう。むしろ歯ぐきが下がらずに歯周ポケットが深くなっていたり、骨が吸収していたりする場合の方が危険です。
[2]歯周病の治療
歯周病は慢性疾患であり生活習慣病と言って間違いありません。したがって治療方法は生活習慣に影響を及ぼすため、一人ひとり患者さんごとに異なってきます。歯周病の治療のポイントは次の3点だと考えています。
① 患者さんの歯周病に対する理解を深める
② 炎症を減らす
③ 歯や歯周組織に加わる力をコントロールする
歯周病を理解する
歯周病の治療にあたっては、この病気を理解してもらうことが不可欠です。歯周病治療の基本は患者さん自身による毎日のプラークコントロール、生活習慣の改善です。これらを疎かにしていては、いくら治療をしても改善は望めません。
患者さんの理解度の違いに応じて治療の目標レベルも異なってきます。仕事が優先なので歯周病はどうでもいい、歯磨きもほどほどにしかしないと考えている方には低いレベルの目標を立てますし、歯周病を治したいと熱望している方には高い目標を立てて、生活習慣の見直し、プラークコントロールの徹底を指導します。
本来は病気に対して理解の足りない方にも、病状を説明して病気を治すよう働きかけなければなりませんが、長年診療に携わっていると、歯周病に対する患者さんの理解度の差を埋めることは容易ではないと実感しています。
炎症を減らす
歯周病は細菌感染による炎症です。したがって炎症をなくすことができれば進行を防ぐことができます。具体的には、
① 歯垢を落とす
② 歯石を取り除く
③ 歯周ポケットをなくす
④ 感染抵抗力を高める
①は患者さんが自宅で主に行い、②は歯科医院で行います。③の歯周ポケットは①と②によって良くなることが多いのですが、改善しない場合は歯肉の手術で治すこともあります。④は歯に限ったことではなく、細菌に対して抵抗力のある健康な体づくりをすることです。
歯周病の症状のページで紹介した70歳代女性の治療後の写真です。ブラッシングもよくしてくれていますが、下の前歯の裏にはすぐ歯石がついてしまうため1〜2ヶ月に1回、歯石除去を行っています。
歯や歯周組織に加わる力をコントロールする
歯周組織は歯に加わった力を受け止める組織で、好ましくない力が加わるとダメージを受けることになります。
好ましくない力とは歯を横揺れさせるような力です。土に埋まっている柵の棒は、上からの力に対しては抵抗するものの、横にゆすっていると周りの土が緩んでグラグラしてきます。
それと同じように、歯も噛む力が根の方向に加わっている分には問題ありませんが、噛む力が横方向に加わると歯周組織が壊れやすくなってしまいます。できれば噛む力の方向を変えるようにした方が良く、専門的には咬合調整と呼んでいますが、この調整は歯科医でなくてはできませんし、歯科医が細かな配慮をしながら実行されなければなりません。
睡眠時の歯軋りも歯周組織には良くなく、歯軋りする人はナイトガードと呼ばれるマウスピースをして寝てもらいます。